魂Aくんは、人として地球に生まれた時、
自分のやりたいことを諦め、親の敷いたレールの上を歩く人生を生きてきました。
本当はとってもとっても音楽が好きで、その道に進みたいと思っていたのです。
田舎から都会に出て、夢を追いかけていた時代もありましたが、代々続く稼業を継がないわけにいかず、泣く泣く夢を手放し、愛する女性とも別れ、旧くから家同士の付き合いがある大店のお嬢さんと結婚することになったのです。
周囲の人が見たら、稼業も軌道に乗り、繁栄し、
子宝にも恵まれて、幸福そうな家庭を築いているようでしたが、心の中では、長い年月、燻り続ける思いを抱いてきたのです。
人としての生が終わる寸前、彼は、もう一度、
この人生をやり直したい。このままでは納得がいかない…そんな想いを抱いていた彼は、その命が潰えた後、心の底でずっと愛していた女性を探し
始めたのです。
魂Aくんは、自分の星に直帰することをすっかり忘れていたのですね。
そんなこんなしているうちに、星行きの船着場への道は閉ざされてしまいました。
ということで、魂Aくんが自分の星に帰るためには、もう一度、人として地球に生まれてこなければならなくなってしまいました。
そんな様子を見守っていた遠い星に坐すAくんの親神様は、
「Aよ、そなたもか…」と、ちょっと落胆したようですが、そんなことはよくあることなので、実はそんなに気にしておらず…
「仕方がない。では、Aを預かってくれるように、根の国の神に頼んでみるか。」と、根の国の神に、直接、連絡を取り、お願いをいたします。
「Aという者が、地球から戻って来れなくなってしまいましたので、すみませぬが、そちらでお預かりいただき、然るべき時に、地球に転生させてください。」と。
余裕がある時は、OKしてもらえますが、
根の国に余裕がない時は、別の場の神さまへお願いすることになります。
今回は、どうやらOKをもらえたようなので、
まぁ、そこでのやりとりにも、神様同士の誓約が生まれるので、なかなか面倒なことだってあるのですけれど、Aくんは、そんなことちっとも知らないので、いい気なもんです。
ということなので、魂Aくんは、地球上で地縛霊や浮遊霊になって浮かばれずにいるわけではなさそうです。
え?根の国ってどこ?地獄のこと???
…いえいえ違うのです。
古事記などでは黄泉の国と書かれてもいますが、
決して、薄気味悪いところではありません。
黄泉比良坂や醜女が追いかけてくるというお話も、すべてが本当ではありません。
そういう場もなくはないのですけれど、
それは、根の国の底の国の話。
根の国の光の園は、美しい光に満ちた森や花園のような場があるのです。
そこに、根の国を治める神々がいらっしゃいます。
Aくんは、親神様の図らいで、根の国にお世話になることが決まりましたので、しばらくの間、魂存在として、根の国で時を過ごすことになります。
根の国では、何をしているのでしょう…ね?
つづく